巻頭のことば
JACET北海道支部の大学英語教育への貢献とは
河合 靖(北海道支部長)
大学英語教育学会の会員数が、東京AILAの開催後をピークに減り続け、現在個人会員数は2,623名(2013年2月20日現在)となっています。北海道支部の会員数は、2012年4月の95名から徐々に回復しましたが、それでも2月20日現在で106名(前年同期104名)となっています。最近、新入会員で目を引くのは、外国人会員と大学院生の増加です。2012年12月から2013年3月までの全国の新入会員34名を見ても、外国人会員17名、学生会員7名となっています。裏を返すと、日本人大学教員の新規入会者は少ないということになります。
大学院生や外国人会員の増加は、研究発表の場を求めてそれが起こっていると解釈できます。先の新入会員リストの中には、海外の大学院で学ぶ外国人も含まれています。大学院の国際競争が激しくなれば、院生が発表の場を求めて国境を越えて動きまわる状況が今後顕著になるでしょう。国際大会の発表言語を英語にし、院生発表枠を設け、Selected Papersの発行へ向けて動いているJACETの方向性は時宜を得ていると言えます。
しかし、増加傾向にあるこれらの研究志向の会員のニーズに合わせるだけで、これからのJACETが発展していけるだろうかという疑問もあります。話はとびますが、先日、朝日新聞の特集で中学・高校の課外活動が取りあげられていました。部活に励む子どもたちは、全員がオリンピック選手やプロを目指すアスリートの卵と言うわけではありません。大多数は、学生生活を豊かにするために毎日練習に取り組んでいます。多くは地方大会の1,2回戦で敗退して競技人生を終了します。彼らにとっての部活の意味を教育活動のなかに位置づけることは、勝利至上主義やスポーツ・エリート育成中心の考え方からくる様々な問題を改善して行く上で重要なことではないかというのが記事の趣旨でした。これは、大学の英語教育にもあてはまることだと感じます。
大学英語教員には、英語教育の専門家として研鑽する義務があるとは思いますが、同時に私たちが日ごろ相手にしている学生は様々です。JACET北海道支部が地域の大学英語教育に貢献するために、どのような活動が求められているのでしょうか。学生生活を豊かにする、親しみやすい大学英語教育の実現を考える。北海道支部が存在価値を認められ、会員数が増加する鍵は、そこにあるような気がしています。